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腎がん

腎がん(腎細胞がん・腎盂がん)は遺伝子治療の対象となるのか、やさしく解説します。

腎がん患者は遺伝子治療を受けられるのか?

遺伝子治療は非常に幅広い適応範囲が特徴であり、腎がんの患者さんも治療を受けることができます。

がん遺伝子治療は人間が本来持っているがん抑制機能の回復を目指し、がん抑制遺伝子を投与することでがん細胞の増殖を止め自然死(アポトーシス)に導く治療法です。国内で標準治療とされている手術療法や放射線療法、化学療法と併用することも可能で、むしろその効果を高めることが期待できます。

従来の抗がん剤のような重い副作用も現在は確認されておらず、がんが進行して体力が低下している状態でも治療を受けることが可能です。

治療対象の除外基準

遺伝子治療が受けられる病院はどこ?

当サイトを運営している「遺伝子治療研究会」は、全国で複数のクリニックと連携しています。

その中でも腎がんに対する遺伝子治療を受けられるクリニックを紹介していますので、治療を検討している方はご確認ください。

遺伝子治療を提供しているクリニックはこちら

そもそも腎がんとは

腎臓に発生する悪性腫瘍が腎がんで、腎細胞がんとも呼ばれます。

腎がんの多くは尿をつくる腎実質の近位尿細管という部分に発生します。また、つくられた尿が集まる腎盂という部分に発生する腎盂がんもありますが、がん細胞の性質や治療法は異なるため腎細胞がんとは区別して考えます。

腎がんはがん全体の約1%と決して多くはありませんが、男性の発症率は女性の約2倍とされ、40歳以上の発症が多いとされています。

腎がんの原因

腎がんの主な原因としては肥満や高血圧、喫煙など生活習慣に関わるものが挙げられます。また、長期間にわたって人工透析を受けている人も腎がんを発症しやすく、さらに遺伝性の病気との関連が指摘されることもあります。

このほか、体液が溜まった袋状の病変が多発する「嚢胞腎」も腎がんの発症リスクを高めるといわれています。

腎がんの症状

初期の腎がんは自覚症状がほとんどないため、自分自身で気づくことはかなり難しいでしょう。早期に発見されるケースは健康診断や人間ドックの機会が多いと思われます。

がんが進行して大きくなってくると、徐々に症状が現れはじめます。もっとも多い症状は血尿ですが、腹部のしこりやわき腹・腰・背中の痛みなどさまざまな症状が出てきます。そのほかにも体重減少や下肢のむくみ、微熱、食欲低下など症状に個人差があるのも腎がんの特徴です。

腎がんのステージ(病期)分類

他の臓器のがんと同じく腎がんも進行度をステージ(病期)として分類し、Ⅰ期からⅣ期の4段階に分けられます。

ステージを決定するためにはTNM分類が用いられ、【T】はがんが周辺組織にどの程度広がっているか、【N】はリンパ節に転移しているか、【M】は離れた臓器に転移しているかを意味します。

病期分類

Ⅰ期

がんの直径が7cm以下で、腎臓内にとどまっている状態です。

Ⅰ期の場合、通常は手術が行なわれます。がんが4cm以下であれば腫瘍だけを取り除く部分切除が標準治療とされます。がんのサイズが大きいなど、部分切除が困難であれば腎摘出を行ないますが、手術後の腎機能を考慮して可能な限り部分切除が推奨されています。

近年では技術の進歩によって、腹腔鏡下手術かロボット支援手術を行なうことが多くなっています。

Ⅱ期

がんの直径が7cmを超えますが、腎臓内にとどまっている状態です。

7cmを超える大きさになると部分切除は難しいため、腎摘出が標準治療となります。その場合、腎臓の周囲の脂肪も同時に取り除きます。通常は腹腔鏡下手術で行なわれますが、がんが大きければ開腹手術が行なわれます。

Ⅲ期

がんが腎臓内にとどまらず、腎静脈や周囲の脂肪組織、下大静脈などに及んでいますが、ゲロタ筋膜(腎臓のもっとも外側の膜)は超えていない状態です。また、腎臓に近いリンパ節に1カ所だけ転移があるものもⅢ期とされます。

Ⅲ期では腎摘出が標準治療になりますが、がんが下大静脈に達している場合は血管の手術も必要です。血流を止めて血管を切開し、がんを取り除いてから血管を縫い合わせる手術で、通常の腎摘出よりもリスクは高くなります。

がんがリンパ節に転移している場合は、リンパ節郭清も同時に実施します。

Ⅳ期

がんがゲロタ筋膜を超えて他の臓器に広がっている状態です。また、リンパ節転移が2カ所以上あるか、離れた臓器に転移がある場合もⅣ期とされます。

Ⅳ期でも可能であれば手術を行ないますが、それが困難な場合は薬物療法が選択されます。しかし、薬物療法が進歩しているとはいえ根治の可能性は低いとされます。

手術は腎摘出に加え、がんが浸潤している部分も一緒に取り除きます。浸潤しやすい臓器は副腎や肝臓、大腸などです。4期の手術は再発率も高くなりますが、根治の可能性はゼロではありません。リンパ節転移や離れた臓器への転移がんも、可能な限り手術を行ないます。

腎がんの治療方法

腎がんの治療では手術療法、放射線療法、化学療法といった、いわゆるがんの標準治療が行われます。ステージや全身状態を考慮したうえで治療法を決定していきます。

手術療法

多くのがんでは、転移している状態であれば原発巣(最初にがんが発生した部位)の手術を行なうことはほとんどありません。そこまで進行していれば原発巣を取り除く意味があまりないためです。

しかし、腎がんの場合は別です。腎がんはさまざまな炎症性物質を放出するという性質があるため、手術で取り除くことが重要となります。

がんのサイズがそれほど大きくない場合はがんを含む腎臓の一部だけを切除します。しかし、がんが大きかったり腎臓内の深い位置にあったり、がんと正常組織の境界が不明瞭な場合には腎臓をすべて摘出する方法が選択されます。

腎部分切除術(腎機能温存手術)

腎臓にできたがんだけを部分的に切除する方法です。腎臓の機能を温存させ、長期的に腎臓機能の低下や合併症のリスクを軽減できるため、可能であれば選択すべき手術方法とされています。

がんのサイズが概ね4cm以下であればこの方法が可能ですが、がんの位置などによっては難しい場合があります。

腎摘除術(根治的腎摘除術)

がんがある腎臓をすべて摘出する方法で、腎部分切除術の適応がない場合に行なわれます。

がんの進行・転移の状態によっては、腎臓だけではなく副腎や周囲の臓器、血管内のがんも併せて切除する場合もあります。

動脈塞栓術(局所療法)

腎臓に血液を送り込む腎動脈を閉塞させ、がんへの血流を遮断する方法です。サイズの大きながんを摘出する場合、その手術の前に行なわれることがあります。また、がんの摘出が困難な場合にもこの方法が検討されます。治療後は一時的に痛みや発熱が生じる場合があります。

経皮的局所療法

小さながんに対する治療法で、経皮的凍結療法やラジオ波焼灼術(RFA)があります。具体的には、特殊な針を体外から直接がんに刺し、凍らせたり焼いたりしてがん細胞を死滅させるという方法です。

通常は超音波やCT、MRIなどの画像検査で確認しながら実施します。この方法は手術に耐えられない高齢者や合併症がある患者さん、手術を希望しない患者さんに対して行なわれます。

手術療法の副作用やリスク

腎臓がんの手術でもっとも気をつけなければならないのが出血です。腎臓は血液中の老廃物や不要な物質を排出する働きがあるため血流が豊富で、腎臓へ血液を送る血管はかなり太いため、万一損傷すると大出血を起こしかねません。腫瘍へのアプローチの方法にもよりますが、腸や脾臓、胃や十二指腸などを損傷する恐れもあります。

また、手術後に腸が癒着して腸閉塞をきたす場合もあります。腸の通りが悪くなるため嘔吐などの症状が出現し、鼻から腸までチューブを通したうえでの安静処置が必要です。

手術の傷口や内部で感染症を起こしてしまうのも代表的な合併症です。

放射線療法

腎がんに対しては他の治療法でも効果を期待できることが多いため、積極的に放射線療法を行なうことはあまりないようです。また、腎がんは放射線に対して抵抗性を持っていることや、腎臓の周辺組織が放射線に弱く正常組織へのダメージが懸念されることもその理由です。

しかし、腎がんが転移した場合には放射線療法が有効な場合があります。以下でお伝えしますが腎がんは血流に乗って骨や肺、脳などに転移しやすく、その症状を抑えるために放射線療法を行なうことがあります。とくに脳に転移した場合は神経症状が出現する場合があるので、そこで放射線療法を行なうと一時的にがんの勢いを止めたり症状を軽減させたりすることが可能です。

放射線療法の副作用やリスク

腎臓が放射線のダメージを受けて機能が低下する可能性があります。腎臓は体内の不要な物質を排出する働きがあるので、機能が低下すると薬の副作用が出やすくなるかもしれません。ただ、腎臓は2つあり、片方が健康であれば日常生活にほとんど支障はないと言われています。

薬物療法・化学療法

腎がんには抗がん剤の効果があまり期待できません。それは、抗がん剤が投与されても腎臓自体の働きで成分を排泄したり代謝したりしてしまうからです。

しかし、最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬剤が次々に登場し、腎がんにも化学療法による治療効果が期待できるようになってきました。

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関与する特定の物質を抑制することでがんの進行を抑える作用があります。

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞から攻撃されないように出しているシグナルを阻害することで、免疫細胞が正しくがん細胞を攻撃できるようにする薬です。

分子標的治療

分子標的治療は、原発がんや転移したがんの手術を行なう前に、がんのサイズを小さくするために行なわれることもあります。

治療の副作用は分子標的薬の種類によって異なるため、治療を開始する前に期待できる効果と副作用について十分に説明を受けておきましょう。

免疫療法

進行性の腎細胞がんの場合は、免疫療法を選択することがあります。

サイトカイン療法

分子標的治療の効果が期待できない場合は、サイトカイン療法も検討されます。インターフェロンという薬剤を使用する治療法で、効果が現れる可能性は15~20%と低いのですが、うまくいくと劇的な効果をもたらすとされます。

また、日本人は欧米人よりもインターフェロンが効きやすいことが知られています。

免疫抑制阻害療法

免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療法で、現在では2次治療、3次治療の選択肢の一つとされています。

ニボルマブという薬剤を使用しますが、投与のタイミングに関して一定の見解はまだ得られておらず、この治療法は今後大きく変化していく可能性を残しています。

化学療法の副作用やリスク

免疫チェックポイント阻害薬の副作用はさまざまです。例を挙げると間質性肺炎や重症筋無力症、糖尿病、肝炎、甲状腺機能異常、神経障害など、身体のあらゆるところに副作用が出るケースもあります。

免疫チェックポイント阻害薬は高い治療成績を上げている薬ですが、その反面、どのような副作用がいつ出現するかわからないのが怖いところです。高齢者や自己免疫疾患の持病がある人は副作用が出やすいとされており、とくに注意が必要です。

腎がんに対する遺伝子治療

腎がんのステージに関わらず、どのような状態でも基本的に遺伝子治療を行なうことは可能です。もし上記の標準治療に適応がない場合であっても問題ありませんが、併用できるのであれば治療効果を高めることが期待できます。

手術や放射線療法、化学療法は標準治療とされるだけあって優れた治療法ですが、いずれも身体に負担がかかる場合がほとんどです。その点、遺伝子治療は人間が本来持っている機能を回復させる治療法なので、身体に大きな負担がかからないのがメリットです。

遺伝子治療の副作用やリスク

遺伝子治療に用いるがん抑制遺伝子は本来人間の身体に備わっているものなので、強い副作用が起きることはないと考えられています。

ただ、投与する薬剤に含まれる治療タンパクでアレルギー反応を起こす人もいます。病院側でも治療の際には安全を確認してから投与していますが、心配な点があれば事前に伝えておきましょう。

腎がん患者の生存率

5年生存率

対象数 生存状況
把握割合
実測
生存率
相対
生存率
腎がん 13,193 97.6 72.2 80.1
Ⅰ期 8,677 97.4 86.9 96.0
Ⅱ期 741 97.8 79.0 86.4
Ⅲ期 1,404 97.8 66.3 74.6
Ⅳ期 2,090 98.1 15.7 17.5

※参照元:国立がん研究センター がん登録・統計:がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計「2010-2011年5年生存率の主な結果」

実測生存率は、がん以外の死因も計算に含めた生存率で、がん患者さんががん以外の病気や事故などで亡くなったケースも計算に含まれています。

一方、相対生存率とは性別や年齢など、同じ条件の集団の期待生存率で実測生存率を割り出すことで、がん以外の死因が補正された生存率です。一般的にがんの生存率を考える場合は、こうした補正の仕方が広く用いられています。

腎がんは他の臓器のがんと比較すると5年生存率は高いと考えられます。特に病期がⅠ期、Ⅱ期の場合は腎摘除術の治療成績が良好なこともあって、表のとおり80~90%と高い数値を示します。しかし、進行がんであるⅣ期になると生存率は急激に低下します。腎がんも早期発見、早期治療が大切だということを表しているといえるでしょう。

腎がん治療の予後・経過観察

腎がんの治療後は、体調やがんの再発・転移の有無を確認するため定期的な通院による検査が必要です。再発や転移を早期に発見できれば、手術を含め治療の選択の幅が広がりますし、治療効果の向上も望めます。

検査はCTやMRI、超音波などの画像診断が中心になります。その種類や受ける時期などは主治医と相談の上で決定します。

腎細胞がんは、治療後10年以上経ってからでも再発することがあります。定期的な通院検査が終わったとしても、健康診断や人間ドックなどで自身の状態を把握し続けることが大切です。

食生活について

腎がんの治療を受けても腎臓の機能自体に問題がなければ、ほとんどの場合は食事の制限は不要です。健康を維持するために暴飲暴食は避け、規則正しい食生活を送りましょう。

ただし、慢性腎臓病を予防するためには塩分の摂りすぎに注意し、水分をしっかり摂ることが重要です。

持病の治療について

腎がんとは別に、高血圧や糖尿病など腎臓の機能を悪化させる持病がある場合は、その治療のほか日常生活で注意すべき点があります。担当医の指導をきちんと守って生活するよう心がけてください。

他の医療機関で処方された薬について

内服薬や画像検査の造影剤には、腎臓の機能に副作用が出る可能性を持つものが少なくありません。他の医療機関で検査を受ける場合や、新たな薬を服用する場合は、必ず事前に主治医に相談してください。

腎がんの転移・再発

一般的に、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って他の組織や臓器に移り、そこで増殖することを転移といいます。そして再発とは治療で消失したように見えたがんが再び大きくなることです。

腎がんは血液の流れに乗って転移しやすいがんだと考えられています。腎静脈は下大静脈を通じて心臓、肺へと流れていくため、がん細胞が肺へと簡単に到達できてしまうのです。さらに骨や脳、肝臓や膵臓にも転移する場合もあります。

また、手術によって腎臓自体を摘出していたとしても、局所的に再発する場合もあります。転移のない腎がんに対して腎臓摘出を行なった場合でも、術後2年以内におよそ3割が再発するとされています。もっとも多い再発部位は肺で、全体の半数を占めています。

腎がんに関する研究状況

ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が進行性腎細胞がんに大きな効果

2021年1月、米国食品医薬品局(FDA)が進行性腎細胞がんに対する初回治療として、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法を承認しました。同じく腎細胞がんに適応があるスニチニブの単剤療法と比較して高い治療効果、そして生存期間の延長が認められたということです。

ニボルマブ、カボザンチニブについて

ニボルマブは商品名「オプジーボ」で、免疫チェックポイント阻害剤のひとつ。日本では悪性黒色腫の治療薬として販売され、その後も肺がん、頭頸部がん、胃がん、そして腎細胞がんなどに適応が認められた高い実績を持つ薬剤です。

カボザンチニブは米国において進行性腎細胞がんなどの適応で承認されている薬剤。日本では商品名「カボメティクス」として、手術不能または転移性の腎細胞がんの治療薬として承認を受けています。

臨床試験の内容と結果

今回の臨床試験は、治療を受けていない進行性または転移性の腎細胞がんを対象に、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法と、スニチニブの単剤療法を比較検討した国際共同試験です。患者さんはオプジーボ240mgを2週間間隔で点滴静注、カボメティクス40mgを1日1回経口投与する併用療法群と、スニチニブ50mgを1日1回4週間経口投与し2週間休薬するサイクルの対照群に分けられ、病勢の進行または毒性が認められるまで継続されました。

果たして結果は注目に値するものでした。スニチニブ単剤療法を行なった対照群に比較して、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法群が全生存期間、無増悪生存期間、奏効率などすべての有効性評価項目で有意な改善が認められたのです。特に無増悪生存期間の中央値や奏効率は実に2倍もの改善とのこと。この結果に基づき、上記のとおりFDAが当該併用療法を初回治療として承認するに至りました。

本研究がもたらすもの

腎細胞がんは多くの患者さんが再発を起こすため、幅広い治療の選択肢が望まれています。そのような中で、今回の臨床試験の結果と承認は、進行性または転移性の腎細胞がんの治療に新たな可能性を切り開いたといえるでしょう。

腎細胞がんの治療の選択肢はまだ拡大の余地があると考えられ、同様の研究や臨床試験には引き続き大きな期待が寄せられています。

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