遺伝子治療のすべて » 遺伝子治療は受けられる?がんの部位 » 卵巣がん

卵巣がん

卵巣がんは遺伝子治療の対象となるのか、やさしく解説します。

卵巣がん患者は遺伝子治療を受けられるのか?

卵巣がんの患者さんも遺伝子治療を受けることは可能です。

がん遺伝子治療はがん抑制遺伝子を体内に投与することで、がん細胞の自然死(アポトーシス)を促す治療法です。がん抑制遺伝子はもともと人間が持っていることに加え、薬物治療とは異なり遺伝子レベルで作用するので大きな副作用がなく、幅広いがんへの適応があることが特徴です。

手術や放射線治療、化学療法といった他のがん治療の効果を損なうことはなく、むしろお互いの治療効果を高めることが期待できるので併用も推奨されています。もちろん、他の治療法の適応がないような状態であっても遺伝子治療を受けることは可能です。

治療対象の除外基準

遺伝子治療が受けられる病院はどこ?

当サイトを監修している「遺伝子治療研究会」は、全国100カ所以上のクリニックと連携しています。

その中でも卵巣がんに対する遺伝子治療を受けられるクリニックを複数紹介していますので、治療を検討している人は参考にされてください。

遺伝子治療を提供しているクリニックはこちら

そもそも卵巣がんとは

卵巣は女性特有の臓器で、その表面に発生する悪性腫瘍が卵巣がんです。

子宮の両側に1つずつ存在する卵巣は、成熟した卵子を周期的に放出する役割を持ち、それは閉経まで続きます。そして、女性ホルモンを分泌する働きも持っています。

卵巣はもっとも腫瘍が発生しやすい臓器だと考えられており、腫瘍の種類も良性から悪性までさまざまです。腹部の奥のほうに位置しているため、腫瘍ができても自覚症状がないことも多く、卵巣が肥大してくるまで発見されないことも少なくありません。

卵巣がんの原因

卵巣がんの原因をひとつに絞ることはできません。全体の約10%は遺伝的要因が関与していると考えられており、医学的にいうとBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子が変異すると発症リスクが高まるとされています。

また、排卵の回数が多いと卵巣がんになりやすいとされ、妊娠や出産の経験がない場合、そして初経が早く閉経が遅いと発症リスクが高まる可能性があります。

卵巣がんの症状

卵巣がんの初期は自覚症状がほとんどみられませんが、進行してくると下腹部の違和感や痛み、不正出血などがみられ、便秘や頻尿、食欲不振などをともなう場合もあります。さらに進行して腹部の臓器に転移するようになると、腹水がたまってお腹が張ったような感じになったり息切れを起こしたりするようになります。この時点で発見された場合は、すでに卵巣がんがかなり進行していると考えられます。

このように卵巣がんは早期発見が難しく、見つかる場合は婦人科検診などで偶然指摘されるケースがほとんどです。

卵巣がんのステージ(病期)分類

多くのがんは進行の度合いや患者さんの全身状態などからステージ(病期)に分類され、それにしたがって治療方法を検討します。この考え方は卵巣がんも同様で、がんが卵巣や卵管内にとどまっているステージⅠ期から始まり、進行するに連れてⅡ~Ⅳ期と4段階に分けられます。

病期分類

Ⅰ期

がんが卵巣または卵管内に限って発生している初期がんの状態で、細かく3つに分けられます。

ⅠA期はがんが片側の卵巣または卵管内に限られ、被膜(卵巣の表面を覆う膜)に浸潤していない状態です。腹水や腹腔洗浄液の細胞検査でもがん細胞は認められません。

ⅠB期はがんが両方の卵巣または卵管内に限られ、被膜に浸潤していない状態です。同じく、腹水や腹腔洗浄液の細胞検査でもがん細胞は認められません。

ⅠC期はがんが卵巣または卵管内に限られますが、手術の操作によって被膜にがんが露出した場合、もしくは自然に浸潤した場合、腹水や腹腔洗浄液の細胞検査でがん細胞が認められる場合のいずれかです。

Ⅱ期

がんが骨盤内(小骨盤腔)に広がっている状態です。

細かく2つに分けられ、ⅡA期は子宮に転移している状態、ⅡB期は他の骨盤腹腔内臓器に広がっている状態を指します。

Ⅲ期

上腹部や骨盤外の腹膜播種(がん細胞が種をばら撒いたように広がること)、後腹膜リンパ節への転移が認められる状態がⅢ期で、細かく3つに分けられます。

ⅢA期は後腹膜リンパ節転移が認められるか、骨盤外に肉眼では見えないような播種が認められる状態です。

ⅢB期は後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認める状態です。

さらにⅢC期は、最大径2cm以上の腹腔内播種を認める状態です。肝臓や脾臓の内部に転移していなくても、それらの被膜へ進展している場合は同じくⅢC期に分類します。

Ⅳ期

がんが肝臓実質または離れた臓器に転移している状態で、細かく2つに分けられます。

胸水中にがん細胞を認める状態であればⅣA期、腹腔外の臓器に転移している状態であればⅣB期に分類します。

卵巣がんの治療方法

多くのがんと同様に、卵巣がんに対しても手術療法、放射線療法、化学療法といったがんの標準治療が行われます。この中からステージや合併症の有無などを考慮して治療法が選択されることになります。

手術療法

卵巣がんに対しては手術が第一選択肢となり、がんを取り切れるかどうかが予後に大きく影響します。したがって、初回の手術では可能な限りがんを取り除くことが大原則となります。

良性腫瘍の場合は腹腔鏡下による手術が広く行なわれるようになっていますが、卵巣がんの場合は開腹手術が基本です。現時点では開腹手術と同等の治療効果が報告されていないため、腹腔鏡下手術は標準治療とされていません。

腫瘍減量術

手術でがんを完全に取り除くことができない場合でも、可能な限り多くのがんを摘出することを目指す手術が腫瘍減量術です。

取り残したがんの大きさが予後に影響するため、転移が大腸や小腸、横隔膜、脾臓にある場合もそれぞれ切除・摘出を行ないます。

腹水細胞診・腹膜生検

腹水細胞診はお腹に細い針を刺して、腹水を採取する処置です。腹水を顕微鏡で検査し、卵巣がんの病期を判断します。

腹膜上に小さなかたまりがみられる場合は腹膜生検を行ない、腹膜播種の有無を調べます。

後腹膜リンパ節郭清・生検

後腹膜リンパ節郭清は、上記と同じく卵巣がんの病期を判断するために必要で、広い範囲のリンパ節を取る処置です。

また、腫れているリンパ節の一部を生検で採取し、リンパ節転移の有無を確認する場合もあります。

手術により起こりうるリスク・合併症

性機能障害

基本的にがんが広がっていなければ膣は温存できるため、手術後の傷の状態が落ち着いて体力が回復すれば、性交渉は可能です。

卵巣がんの手術は身体的な変化だけではなく、心理的な変化も起こりやすくなります。性交時の痛みや性欲減退がみられる場合もありますので、パートナーと対話し、コミュニケーションをとることも大切です。

リンパ浮腫

手術と同時にリンパ節郭清を行なうと、リンパ浮腫(むくみ)を起こすことがあります。浮腫が生じる部位は、リンパ節郭清を行なった範囲によって変わります。

更年期障害に似た症状が出る

閉経前の患者さんが両方の卵巣を摘出すると、女性ホルモンが急激に減少して更年期障害に似た症状が出ることがあります。症状としては発汗やほてり、食欲低下、倦怠感やイライラ感、頭痛や肩こり、動悸、不眠などさまざまです。

こうした症状は時間の経過とともに改善していきますが、日常生活に支障が出るようなら主治医に相談しましょう。

放射線療法

卵巣がんに対して根治目的で放射線治療を行なうことはありませんが、再発した場合に痛みや出血などの症状を和らげるために実施する場合があります。

また、脳などに転移している場合には、症状の緩和に加えて予後の改善を目的として放射線治療を行ないます。

放射線治療によって起こりうるリスク・合併症

放射線治療において考えられる副作用は、照射部位の皮膚や粘膜の炎症、倦怠感や吐き気などです。通常は治療を終えると自然に回復しますが、数か月後から数年後など、かなり時間が経過してから副作用の症状が出るケースもあります。

化学療法

卵巣がんは進行してから発見されることが多いため、手術後に化学療法を行なうケースがほとんどです。初期のうちに発見された場合でも、がんのタイプによっては再発の可能性が高いと判断されれば手術後に化学療法を行ないます。

また、がんのサイズが大きかったり合併症があったりして初回の手術をそのまま行うことが難しい場合は、手術前に化学療法を行ないます。その結果、がんが小さくなれば手術を行なうことが可能です。

化学療法:TC療法

TC療法とは、パクリタキセルとカルボプラチンという作用が異なる2種類の抗がん剤を組み合わせた化学療法です。

パクリタキセルの主な副作用は末梢神経障害で、しびれの症状が頻繁にみられます。症状が重くなると回復も遅く、後遺症が残る場合もあります。アルコールが添加されているので、お酒に弱い人は酔ったような感じになるかもしれません。

こうした副作用で化学療法を続けることが難しい場合は、薬剤の変更または治療中止を検討します。

分子標的治療:ベバシズマブ

分子標的薬ベバシズマブは、がん細胞に栄養を供給する新しい血管の形成を阻害します。

消化管に穴が開くなど重篤な副作用が起こる可能性があるので、使用にあたっては緊急時に十分な対応ができる医療機関において、そして化学療法に十分な知識と経験を持つ医師の指示が必要です。

化学療法によって起こりうるリスク・合併症

一般的な細胞障害性抗がん剤は、がん細胞だけではなく正常な細胞にもダメージを与えます。特に新陳代謝が活発な毛根や粘膜、骨髄などの細胞が影響を受けるため、脱毛や口内炎、下痢などのほか、白血球や血小板が減少する副作用が起こります。また、肺や腎臓に障害が起こることもあります。

卵巣がんに対する遺伝子治療

基本的にどのようなステージであっても、卵巣がんに対して遺伝子治療を行なうことは可能です。手術や抗がん剤などのように、全身状態が良好でなければ治療を受けられないということもありません。

遺伝子治療は人間が本来持っているがん抑制遺伝子の力を利用した治療法のため、身体に大きな負担をかけることがないからです。したがって、がんが進行して体力が低下している人でも遺伝子治療を検討することは十分に可能なのです。

遺伝子治療によって起こりうるリスク・合併症

上記のとおり、遺伝子治療は身体に大きな負担をかける心配はありません。

副作用としては、薬剤を投与した際に発熱や発疹などの反応がみられる場合がありますが、重症化することは起こりにくいとされます。

卵巣がん患者の生存率

5年生存率

Ⅰ期

Ⅱ期

Ⅲ期

Ⅳ期

※参照元:卵巣がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

生存率には実測生存率と相対生存率があります。実測生存率は死因に関わらず、すべての死亡を計算に含めた生存率で、がん以外の死亡率も含まれます。

一方、相対生存率とは特定の病気の患者集団の生存率をそれ以外の集団の生存率と比べるための指標です。生存者の割合は、診断または治療開始から5年後、10年後と一定の時点で算出します。相対生存率は、特定の病気によって余命が短くなるかどうかを明らかにするもので、多くのがんの統計に用いられている考え方です。

卵巣がんの転移・再発

がんが他の臓器やリンパ節に移動して増殖していくことを転移、治療によって消失したように見えたがんが再び出現することを再発といいます。

卵巣がんは再発しやすいため、治療後も慎重な観察が欠かせません。もし転移や再発を起こすと、治療の目的は根治から症状の緩和へと変わり、がんと長く共存していくことを目指すようになります。

卵巣がん治療の予後・経過観察

卵巣がんの治療後は、再発の早期発見や合併症の治療のために定期的な通院による経過観察が必要です。その目安は、治療後1~2年目は1~3カ月ごと、3~5年目は3~6カ月ごと、それ以降は1年ごとです。

検査は必要に応じて問診や内診、腫瘍マーカー、超音波検査、CT撮影などを行ないます。

手術後の生活

手術後の日常生活における活動範囲や運動の程度については、主治医からよく説明を受けておきましょう。手術の傷の状態が落ち着いたら、体力の回復に合わせてウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に運動量を増やしていきます。

ある程度の運動を始めるのは、焦らずに家事などの日常動作が元通りにできるようになってからにしてください。もし傷の痛みや違和感などがあれば、すぐに主治医に相談しましょう。

放射線治療後の生活

放射線治療後は、照射部位の皮膚炎の予防が大切です。まずは刺激を与えないこと。こすったり掻いたりしないように注意してください。

放射線による皮膚炎は通常の皮膚トラブルとは違います。治療には放射線の専門知識が必要なので、もし症状が出てしまったら自分で判断せずに専門医に相談してください。

薬物療法後の生活

近年は副作用に対する予防や症状緩和の治療が進歩しており、これまでと同じ日常生活を送りながら通院で化学療法を受けられるようになっています。

とはいえ、起こりうる副作用やその対処法などは前もって理解しておくべきです。主治医や薬剤師、看護師などに疑問や不安なことを相談しつつ治療を続けましょう。

卵巣がんに関する研究

進行した卵巣がんの悪性化に関わる新たなメカニズムの解明

名古屋大学大学院医学研究科産婦人科学をはじめ、同大ベルリサーチセンター共同研究講座、国立がん研究センター研究所、アデレード大学の研究グループが、進行した卵巣がんの悪性化に関わるメカニズムを解明し、その腹膜環境から新たな化学療法への抵抗性の原因を発表しました。

注目のポイント

卵巣がんの多くは腹膜播種(後述参照)を起こしている進行ステージに発見され、治療が困難となる予後不良ながんです。抗がん剤が効かなくなることが予後不良となる最大の原因ですが、そのメカニズムに関しては不明な点も多くありました。

本研究では、本来はバリア機能を果たすべき腹膜表面の中皮細胞が、がん細胞から放出される因子によって卵巣がんに関わる腹膜中皮細胞へと変化し、がん細胞とともに浸潤して腹膜播種を起こすことがわかったのです。

また、腹膜中皮細胞に発現する糖タンパク質の一種「フィブロネクチン」ががん細胞を活性化させることで、抗がん剤の一種であるプラチナ製剤が効かなくなることも判明しました。

研究に至るまでの流れ

婦人科領域におけるもっとも予後不良ながんのひとつが卵巣がんです。その多くは腹膜播種と呼ばれる、腹膜の壁全体的に多発性の小さな転移を起こす進行の仕方が特徴です。

この腹膜播種はプラチナ製剤などの抗がん剤を中心とした化学療法など初回治療の効果は比較的高いのですが、高い確率で再発をきたします。そうなると化学療法に抵抗性を示して薬が効かなくなり、難治性のがんへと変化していきます。

このような化学療法が効かなくなっていくメカニズムに関しては、これまでにも複数の報告がありましたが不明な点も多く、新たなメカニズムの解明や治療標的の研究が求められていました。

研究の成果

卵巣がんの腹膜播種は、見方を変えると腹膜ががん細胞の生存を支える土壌になっているともいえます。本研究では環境としての腹膜に着目し、腹膜播種の特徴的な構成要素である腹膜中皮細胞にフォーカスされました。卵巣がん細胞から放出される液性因子「TGF-β1」によって腹膜中皮細胞を生み出すことが明らかになったのです。腹膜中皮細胞は卵巣がんに協力的で、がん細胞の腹膜への接着と増殖を促進します。

一方、腹膜播種という1つひとつは小さな環境下において腹膜中皮細胞がどのように進展し、化学療法が効かなくなっていくことにどう影響しているのかは解明されていませんでした。これについては、腹膜中皮細胞に発現する糖タンパク質の一種「フィブロネクチン」ががん細胞を活性化させ、がん細胞のアポトーシス(自然死)を防ぐことがわかっています。そのため化学療法におけるプラチナ製剤が効かなくなるのです。

本研究がもたらすもの

本研究によって、腹膜播種の微小環境では卵巣がん細胞と腹膜中皮細胞の相互関係ががんを進行させ、一部のプラチナ製剤が効かなくなる原因になっている可能性が示唆されました。

したがって、こうしたメカニズムの外因的な要因となっている腹膜中皮細胞を治療のターゲットにすることは、腹膜播種を起こしている進行した卵巣がんに対する新たな治療戦略につながると期待されます。

参考元:国立がん研究センター「進行卵巣癌の悪性化に関わる新たなメカニズムを解明」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0129/index.html

遺伝子治療を行う
クリニック一覧を見る