対象数 | 生存状況 把握割合 |
実測 生存率 |
相対 生存率 |
|
---|---|---|---|---|
膵臓がん | 20,914 | 98.3 | 8.7 | 9.8 |
Ⅰ期 | 1,262 | 97.7 | 39.9 | 45.5 |
Ⅱ期 | 5,227 | 98.3 | 16.4 | 18.4 |
Ⅲ期 | 3,695 | 98.4 | 5.8 | 6.4 |
Ⅳ期 | 10,070 | 98.4 | 1.3 | 1.4 |
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膵臓がんは遺伝子治療の対象となるのか、やさしく解説します。
遺伝子治療はその特性から適応範囲が非常に広く、膵臓がんの患者さんも治療を受けることが可能です。
遺伝子治療が最も活用されているのはがんの領域になります。正常な細胞が本来持っているがん抑制遺伝子を患者さんに投与することで、がん細胞の異常な増殖をストップさせてアポトーシス(細胞の自然死)を促します。従来の抗がん剤のようにがん細胞以外に影響することがないので、強い副作用もありません。前がん状態や初期がん、末期がんまであらゆる状態において治療を受けることができます。
ただし、がんの進行状況や、治療を希望する方の体の状態によっては、治療を受けるのが難しいこともあります。治療対象のおもな除外基準については、下記のリストをご参照ください。
当サイト監修をされている「遺伝子治療研究会」では、全国のさまざまなクリニックと連携しています。
その中でも膵臓がんに対する遺伝子治療を受けられるクリニックを複数紹介していますので、治療を検討している方は参考にしてください。
消化液の産生と血糖値を調節するホルモンの分泌という重要や役割を持っている膵臓。そこにできる悪性腫瘍が膵臓がんです。膵臓は胃の裏側と背骨の間、腹部の奥側にあり、他の臓器や血管に囲まれています。したがって膵臓がんを発症しても発見が遅れがちで、難治性のがんとされています。
膵臓がんはそのほとんどが消化液を運ぶ膵管の細胞に発生します。一般的に膵臓がんといえば膵管がんのことを指すと考えていいでしょう。このほかに、血糖値を調節するホルモンを分泌する細胞のかたまり「ランゲルハンス島」に発生する神経内分泌腫瘍がありますが、発症率は膵臓がん全体の1~2%と低くなっています。
膵臓がんの原因に挙げられるのは炎症や胆石、糖尿病、生活習慣などです。とくに膵臓の炎症を繰り返すと細胞ががん化しやすくなるので注意しなければなりません。
糖尿病を患っている人は、健常者よりも膵臓がんの発症率が高くなるといわれています。実際の調査では発症率が2倍近くに跳ね上がるという報告も。とくに生活習慣に起因する2型糖尿病のほうが膵臓がんを発症しやすいという考え方もあり、暴飲暴食や欧米型の食事、肥満、喫煙などが関与するとされます。
逆にいえば、適度な運動や食生活の見直し、節酒、禁煙などが膵臓がんの予防につながるとも考えられるでしょう。
初期の膵臓がんは自覚症状がほとんどありません。これが早期発見を困難にしている最大の理由です。
膵臓がんが進行すると腹痛や食欲不振、腹部の膨満感、さらに背部の痛みなどが出現します。こういった症状は膵臓がんではなく他の病気にもよくみられるので、そうなっても膵臓がんが発見されないことも珍しくありません。
がん治療は一般的にがんの進行度や全身状態などから治療方法を検討することになりますが、これは膵臓がんの治療も同様です。その進行度を示すものがステージ(病期)分類です。
膵臓がんのステージはがんの大きさや広がり方、リンパ節や血管・他臓器への転移の有無などから判断され、0期~Ⅳb期の6段階に分けられます。
先ほど膵臓がんは発見が遅れがちだとお話しましたが、実際にリンパ節や他臓器に転移があるステージⅣ以降で発見される人が大半を占めています。0期の段階で発見されるケースは極めてまれです。
基本的に膵臓がんに対しては手術療法、放射線療法、薬物療法(化学療法)といった標準治療が行われます。
ステージを考慮して治療法が選択されることになりますが、場合によっては複数の治療を組み合わせることもあります(集学的治療といいます)。
がんを切除できると判断されれば手術療法が選択されます。
手術が可能かどうかは、がんが主要な血管を巻き込んでいないか、転移があるかどうかなどによって判断されます。
がんが膵頭部を中心に存在している場合は、膵頭部と併せて十二指腸や胆管、胆のうも切除します。がんの位置によっては胃や血管の一部の併せて切除します。
従来は胃の2/3ほどを併せて切除する膵頭十二指腸切除術(PD)が一般的でしたが、近年は可能な限り切除範囲を小さくするため、胃をすべて温存するPPPDや胃の大部分を温存するSSPPDが主流となりつつあります。
がんを切除した後は残った膵臓と小腸をつなぎ合わせ、膵液が小腸に流れるように再建手術を行ないます。残った胆管や胃も小腸もつなぎ合わせます。
がんが膵体尾部にある場合は、膵臓の体部、尾部を切除し、一緒に脾臓も摘出するのが一般的です。消化管は切除しないので、前述のような再建手術は不要です。
がんが膵臓全体に広がっている場合は、膵臓をすべて摘出する必要があります。当然、膵臓の機能が失われるので、インスリンや消化酵素が分泌されなくなります。手術を受けた後は、膵臓の機能を補う治療を続けなければなりません。
膵頭部の手術は腸とつなぎ合わせる部分が多いため、膵尾部の手術より回復に時間がかかります。がんの部位によっては腸の動きを司る神経も併せて切除するため、下痢を起こすことが多くなります。
手術した部分から胆汁や膵液が漏れ、感染症や腹膜炎、出血を起こす可能性があります。胃の動きが回復せずに食事が摂れなかったり、吐き気がみられたりすることもあります。その場合は、胃の動きが回復するまで絶食し、点滴などで栄養を補給します。
また、胆汁がたまって胆管炎を起こした場合は、抗菌剤などによる治療を行ないます。
手術の際に脾臓を摘出すると、肺炎球菌など細菌に対する抵抗力が低下します。そのため、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が必要な場合があります。
膵臓の機能が失われるので、多くの場合は糖尿病や消化吸収障害、脂肪肝などが起こります。
糖尿病に対しては定期的にインスリンを使用し、消化吸収障害や脂肪肝に対しては膵液の代わりに消化剤を使用します。
がんに放射線を照射してがん細胞を死滅させるのが放射線療法です。
膵臓がんの場合は化学療法と同時に実施されることも多く、治療効果を高めることが期待できます。
放射線を照射する部位や照射量などによって変わりますが、皮膚の色素沈着や吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球低下などが一般的な副作用です。
まれに胃や腸の粘膜がダメージを受けて出血し、黒い便がみられる場合もあります。
他臓器に転移がある場合や再発した場合には、抗がん剤を用いた薬物療法や化学療法を行ないます。転移がない場合でも、手術後に再発予防のために化学療法を行なうのが一般的です。
抗がん剤といえば副作用というイメージのとおり、薬物療法や化学療法は正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。代表的な副作用は吐き気や倦怠感、脱毛といった症状が挙げられますが、骨髄抑制のような重篤な副作用が起きる可能性も。副作用が強い場合は化学療法の継続が困難になる場合もあるのです。
手術が不可能な場合も、がんの進行を抑えて症状緩和や延命を目的とした化学療法を実施します。放射線治療と組み合わせた化学放射線療法を行なう場合もあります。
手術が可能な場合は、手術の前後に一定期間の化学療法を実施することで再発の確率を低下させ、または生存期間の延長が望めることがわかっています。
なお、病期が0期の早期がんの場合は手術前後の化学療法を実施しません。
化学療法を行なってもがんの進行や再発がみられたら、それまでの治療とは違う薬剤を使用します。
がん遺伝子検査の結果、遺伝子の変異が認められた場合は、適応に合わせて免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などを選択します。
細胞障害性抗がん剤を用いる化学療法は、個人差はありますが強い副作用がしばしばみられます。とくに粘膜や毛髪、骨髄など代謝が活発な細胞が影響を受けやすく、口内炎や下痢、吐き気、脱毛などが起こり、全身の倦怠感や肝臓・腎臓の機能低下がみられることもあります。
副作用の多くは一過性の症状で、その症状を抑える治療も進歩していますが、それでも副作用が強い場合は治療内容の変更や治療中止を検討せざるを得ません。主治医に治療の内容を詳しく確認し、十分に理解したうえで納得できる治療を選択しましょう。
基本的にどのステージの膵臓がんであっても遺伝子治療を行なうことが可能です。標準治療の適応がない場合でも問題ありません。
遺伝子治療は正常な細胞が本来持っている機能を活かした治療法です。抗がん剤の副作用のように正常な細胞にダメージを与えることがないのが、どんな状態でも遺伝子治療を受けることができる大きな理由です。
遺伝子治療はどのステージでも受けられるほど身体に負担をかけない治療法だと考えられています。とはいえ、副作用がまったくゼロというわけではありません。たとえば、投与する薬剤に対してアレルギー反応が起こり、発熱や発疹がみられる可能性もあります。
対象数 | 生存状況 把握割合 |
実測 生存率 |
相対 生存率 |
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---|---|---|---|---|
膵臓がん | 20,914 | 98.3 | 8.7 | 9.8 |
Ⅰ期 | 1,262 | 97.7 | 39.9 | 45.5 |
Ⅱ期 | 5,227 | 98.3 | 16.4 | 18.4 |
Ⅲ期 | 3,695 | 98.4 | 5.8 | 6.4 |
Ⅳ期 | 10,070 | 98.4 | 1.3 | 1.4 |
※参照元:国立がん研究センター がん登録・統計:がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計「2010-2011年5年生存率の主な結果」
実測生存率は、すべての死亡を計算に含めた生存率で、がん患者さんであってもそれ以外の病気や事故などによる死亡も含まれています。
一方、相対生存率とは性別や年齢、地域など、同条件のグループの期待生存率で実測生存率を割り、死因ががんだけになるよう補正した生存率です。がんの生存率を考える場合は、相対生存率を用いたほうがより実情に近くなるといえるでしょう。
依然として膵臓がんは治療が困難ながんです。すべてのがんを含めた相対生存率は66.4%とされていますが、膵臓がんだけでみると表のとおり9.8%と生存率は有意に低く、進行がんであるⅣ期の5年生存率はわずか1パーセント台となっています。
膵臓がんの手術を受けた後も、回復の程度や再発の有無を確認するため定期的な通院による検査が必要です。頻度は患者さんの状態によって変わりますが、少なくとも手術後5年間、それ以降も継続して検査を受けることが推奨されます。
手術後の検査では黄疸の有無や肝臓機能、血糖値、腫瘍マーカーなどを調べるための血液検査や超音波、CT、MRIなどの画像検査が主になります。
膵臓がんの手術を受けた後は、食べ物の消化に必要な胆汁や膵液の量が減ったり、分泌されなくなったりする場合があります。このため消化不良による下痢を起こしやすくなるので、消化の良い食べ物をバランスよく摂ることが重要です。
消化や吸収には時間がかかるので、食事の量を少なめにし、何回かに分けるようにしましょう。一度にたくさん食べると消化や吸収が追いつかなくなってしまいます。脂肪分の摂りすぎにも注意が必要です。動物性脂肪を控えて植物性脂肪を摂るようにしてください。大豆製品や魚など、良質なたんぱく質の摂取も推奨されます。
なるべく消化管に刺激を与えないよう、コーヒーや紅茶は控えめに。飲酒の可否は医師に確認しましょう。
膵臓を切除した場合、新たに糖尿病を発症したり、もともとの糖尿病が悪化したりするケースが多くあります。とくに膵全摘術を受けた場合はインスリンが分泌されなくなるので、自己注射でインスリンを投与しなければなりません。
自己注射の方法は退院前に主治医や看護師、薬剤師から指導されます。
膵臓がんが周囲のリンパ節や他の臓器に広がることを転移、治療によって見えなくなったがんが再び現れることを再発といいます。
膵臓は位置的に消化器系の臓器や主要血管、リンパ節に囲まれているため、膵臓がんの転移や再発が起こりやすい傾向にあります。とくに多いのは肝臓や腹膜、肺、リンパ節、骨などへの転移です。
大阪大学大学院医学系研究科を中心に、東北大学大学院医学系研究科、国立がんセンター、東京女子医科大学、杏林大学、みずほ情報総研株式会社による研究グループが、日本人における家族性膵臓がんの関連遺伝子を明らかにしました。この研究は膵臓がん克服に向けた大きな前進だと考えられています。
欧米では家族性膵臓がんと関連遺伝子が広く知られていましたが、この研究によって日本でも欧米と同様に認められたことになり、新たな関連遺伝子の候補も特定されました。家族性膵臓がんの存在が正しく理解されれば、該当する家系の人には定期的な検査が推奨されます。
そして、家族性膵臓がんの原因となる遺伝子によっては、治療効果が期待できる分子標的薬も存在するのです。
そもそも家族性膵臓がんとは、親子または兄弟姉妹の2人以上が膵臓がんを発症している家系の人に発症する膵臓がんを指します。米国のジョンズ・ホプキンズ大学の国立家族性膵癌登録制度(NFPTR)では、第一度近親者(親子、兄弟姉妹)に膵臓がん患者がいる家系とそうではない家系を比較すると、前者は10倍近くも膵臓がん発症率が高いことがすでに2004年に報告されています。
日本でも1,197人の膵臓がん患者の家族歴が調査され、その7.3%にあたる88人で第一度近親者に1人以上の膵臓がん患者が発生していることが報告されてきました。しかし、人種の異なる日本を含むアジア諸国においては、膵臓がんの原因となり得る関連遺伝子の網羅的な解析は行われてこなかったのです。
本研究では、対象となった81人の家族性膵臓がん患者の16%に、欧米での家族性膵臓がん研究で発見された関連遺伝子に病原性のある変異が認められました。また、これまでに報告のなかった遺伝子にも変異が認められたケースもあります。
その中で「ATM」「BRCA1/2」「PALB2」という遺伝子に変異があるがんには、分子標的薬のひとつであるPARP阻害剤やプラチナ製剤が効果を示すことがわかっています。家族性膵臓がんにおいては、日本でも原因となる遺伝子によっては、がん遺伝子検査を行なえば治療の選択に有益な情報が得られるかもしれません。
一般的に、家族性を含む通常の膵臓がんでは「KRAS」という遺伝子の変異が90~95%に認められています。しかし、本研究ではKRASの変異は81%にとどまり、その代わり「BRCA1」「MLH1」「SMAD4」「ARID1A」といった遺伝子に変異がみられました。これは、一部の家族性膵臓がんが通常の膵臓がんとは異なるメカニズムで発症している可能性を示唆しています。また、若年発症の膵臓がんにおいては「MSH2」「POLE」「TP53」「FAT4」といった遺伝子に病原性のある変異が認められています。
本研究の成果によって、日本でも欧米と同様に家族性膵臓がん患者における特定の遺伝子の変異が明らかになりました。
がんゲノム医療が始まった昨今、家族歴の情報は非常に重要です。今後は膵臓がんに対するがん遺伝子パネル検査において、本研究で発見された遺伝子変異が見つかることもあるでしょう。
そして、関連する遺伝子の種類によっては、特定の抗がん剤の治療効果が期待できるかもしれません。
参考元:国立がん研究センター「日本人の家族性膵臓がん関連遺伝子を解明」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0808/index.html